シャントとは
シャントとは透析治療を行うために静脈と動脈を直接繋いだものです。
他の呼び方としてバスキュラアクセスとも言いますが同じ意味です。
透析患者さんは透析治療を受けるためにシャントが必要不可欠です。シャントを健全な状態で長く保つためには「スタッフが患者さんに適切な指導をする」「患者さん自身が日常生活で気を付ける」「シャントの異常に早く気付く」という3つがとても大事です。
この3つを守るためにはスタッフがシャントについてきちんと理解しておく必要があるのですが、シャントとは透析患者さん特有なもので透析業務を始めたばかりのスタッフでは初めて見るという方も多いのではないでしょうか?
今日はそんな大事なシャントについてなるべく分かりやすく解説していきます。
シャントの必要性

そもそも何でシャントを作る必要があるんですか?

簡単に言うと普通の静脈に針を刺しても透析が出来ないからなんですよ。
その理由をこれから説明していきますね。
透析とは血液ポンプを使って200~400mL/minの血液を体内から引っ張って、体内に返してを繰り返しています。
体内から引っ張てくるのを脱血、体内に返すのを返血といいます。

単位のml/minとは1分間あたりに何ml流れるかという事です。
1時間あたりの量だと単位はml/hになります。
単位変換も出来るようになっておくと良いですね
シャントはこの脱血を行うのに必要なのです。
人間の静脈には大体30~50ml/minの血液しか流れていません。
(※腕の静脈の場合です。大腿部や体の中枢の静脈にはもっと多くの血液が流れています)
これぐらいの血液しか流れていない血管から200ml/minの血液を脱血するのは不可能です。
イメージでは『ちょろちょろしか出ていないホースから1分間で風呂がいっぱいなるほどの水を取れ』と言われているようなものです。無理ゲーです。
その為血液がたくさん流れている動脈と繋げる事で静脈にたくさんの血液を流しているのです。
そうする事で静脈に針を刺しても脱血する事が出来ます。


最初から動脈に針を刺したらダメなんですか?

動脈に毎回穿刺するのはリスクがとても高いです。そのリスクを避ける為にシャントを作ります。
動脈穿刺の主なリスクは次のようなものです。
・動脈は深い位置を走行しているため穿刺が困難
・穿刺に失敗した時の出血量が尋常じゃない
・とにかく痛い
シャントの種類
単にシャントといっても実は様々な種類があります。
ここではシャントの種類とその特徴について紹介します。
内シャント(AVF)
一般的にシャントと呼ばれるものはこれにあたります。最も多く使用されているもので全透析患者の内約9割の患者さんがこの内シャントを使用しています。
内シャントは字のごとく体の内側に作成するシャントです。
主に前腕の橈骨動脈と橈骨皮静脈や正中皮静脈を吻合(繋げる)事が多いです。
血管の状態によっては上腕動脈を使う事もあります。
外シャント
これは体の外側で動脈と静脈を繋ぎ合わせます。正確には動脈と静脈にそれぞれチューブを繋げて、そのチューブどうしを繋ぎ合わせるシャントです。
体の外にチューブが出ている事もあり感染面などの理由から現在はほぼ使われていません。
人工血管(グラフト、AVG)
内シャントの次に多いのがこの人工血管です。グラフトといったりもします。
何らかの理由で内シャントが作成出来ない場合の選択肢になります。
内シャントが作成出来ない理由は様々ですが、例として「シャント再建を繰り返す事で吻合できる血管が無くなった」「内シャントでは流量が取れない」といった場合があります。
グラフトは内シャントに比べてシャント感染を起こしやすい、または重症化しやすいといった特徴があります。
日頃からシャントを清潔に保つことはもちろんの事、シャントのささいな変化を見落とさないようにしっかりと観察する必要があります。
動脈表在化
動脈を手術で浅いまで持ち上げたものです。その動脈に直接穿刺します。
内シャントも人工血管もどちらも作れないやシャントによる心負荷に耐えられない場合に作成されます。

シャントは人工的に静脈と動脈を繋げるから非生理的な状態なんです。
動脈の勢いで心臓まで血液が返ってしまうため心臓にかかる負担が大きくなってしまいます。
動脈が浅い位置にあるため通常の動脈穿刺に比べると穿刺しやすくなっていますが、穿刺ミスをした場合の出血リスクというものは変わらないため注意が必要です。
また、血液の流れが強いため抜針後の止血も気を付けなければいけません。
上腕動脈を表在化させる事が多いです。
長期留置カテーテル
動脈表在化も難しいような患者さんで選択される最終手段です。
カテーテルを挿入し、それを長期間いれたままにして透析ではそのカテーテルに血液回路を接続します。
カテーテルは挿入部の感染を起こしやすい事もあり管理がとても重要になります。
また、血栓等でカテーテルがつまってしまった場合はカテーテルの交換が必要になります。
交換の頻度は個人差があり、年単位で持つ場合もあれば数か月で交換が必要になる場合もあります。
カテーテルの挿入場所は右内経静脈が一般的です。
まとめ
今回はシャントを作る意味とシャントの種類について説明しました。
シャントにはそれぞれ特徴があるのでしっかりとその特徴をつかみ、それにあったシャント管理を実施していきましょう!
次回はシャントの吻合方法やそれぞれに起こりやすい合併症の事などを説明してきます。
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