血液浄化の工学的基礎知識 血液浄化の治療指標
こんにちは!もっちゃんです!!
前回から血液浄化の治療指標についての解説をしています。
今日は「Kt/V」についてです。
Kt/Vについては聞いた事があるけどよく分からないという方も多いんじゃないでしょうか?
Kt/Vは「ケーティーパーブイ」や「ケーティーオーバーブイ」と呼びます。
Kt/Vとは透析においてとても重要な指標でどれだけ透析が出来ているかを表しており、一般的に透析効率と呼ばれる指標です。
ここで言うKとは尿素のクリアランス、tは透析時間、Vは体液量を表します。
Kt/Vは生命予後に直結していると言われ、透析においてとても重要な意味を持ちます。
これからKt/Vについてもう少し詳しく解説していきます。
適正なKt/V
日本透析医学会のガイドラインにはKt/Vを最低1.2以上、目標を1.4以上にするように記載があります。
この1.2や1.4とはいったい何なのでしょうか?
まず、Kt/V=1とは体中の血液が一回透析されたという事です。

体中の血液が一回透析されるのであればKt/V=1で十分な気がしますが、なぜガイドラインでは1.2や1.4という基準が設けられているのでしょうか?
ここでクリアランスを思い出してください。
クリアランスとは血液中の何割の溶質が除去されたかを表す数値でしたね。
つまり一回透析されたからといって血液中の溶質の全てが除去されたという訳ではないんです。

体中の血液が一回透析された程度では不十分なのです。なのでガイドラインでは最低1.2、目標1.4という基準が決められているのです。
ちなみにこの最低1.2というのはKt/Vが1.2以下だと生命予後が著しく悪くなるという研究結果から導かれた基準です。
Kt/Vの意味
ここではKt/Vの意味について簡単に説明します。
Kとは尿素のクリアランス、tは透析時間、Vは体液量を表します。
つまりこのKt/Vという式では
クリアランスが良くて透析時間が長く、体が小さい方がKt/Vは良くなるという事を表しているんです。
多分これだけでは何を言っているか分からないと思います。
水槽を思い浮かべてください。
例えば家で熱帯魚を買うときに水槽に浄水器を付けますよね。
その浄水器のおかげで水は常に綺麗な状態が保たれます。
今度はその浄水器を水族館の水槽に取り付けてみると想像してください。
水って綺麗になりますかね?ならないですよね。
水槽の大きさに対して浄水器の性能が明らかに足りないです。

大きい水槽の水を綺麗にするにはそれだけ性能が良い浄水器を使う必要がありますよね。
この考えを透析に置き換えてみると、浄水器の性能がダイアライザ、浄水器に水を送るポンプが血流量、浄水器が稼働する時間を透析時間、水槽の大きさを体液量として考えることが出来ます。
そしてどれだけ水が綺麗になったかがKt/Vです。

つまり、患者さんの体の大きさに合わせて血流量やダイアライザ、透析時間などを決定する必要があるということです。
Kt/Vの計算
Kt/Vは尿素のクリアランスと透析時間を体液量で割ったものだと説明しましたが、実はそれだけでは不十分なんです。
実際には除水による体液量の変化やリバウンド現象というものが関係しており正確にKt/Vを算出するにはかなり複雑な計算をする必要があります。
正直これから紹介する計算式を覚える必要はありません。現場でKt/Vを手計算する事はまずないです。それに計算するにしても今は数値を入力するだけで計算してくれるサイトも多く存在します。
正直、Kt/Vを計算するのは難しいんだな~ぐらいでOKです。

CB(T)/CB(o)の所がクリアランスを計算しているところですが、Kt/Vの計算では尿素(BUN)のクリアランスを使用します。
一応計算式を記載しましたが、透析技術認定士レベルではこれを計算しなさいって事はまずありません。
今後研究などをしてみたいと思っているかたはしっかり勉強する必要があります。
まとめ
今日はKt/Vについて解説しました。
Kt/Vとは透析がきちんと出来ているかを表す指標で、透析効率と呼ばれます。
Kt/Vを考える時は水槽と浄水器に例えてみると分かりやすかったですね。
今回説明したのはKt/Vの基礎の部分です。実はKt/Vとはもう少し複雑でKt/VspやKt/Veといった種類があったりします。
次回はKt/Vをもう少し深く理解するために1-コンパートメントモデルというものの解説をしたいと思います。
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