透析技術認定士試験範囲 『血液浄化の工学的基礎知識』 ダイアライザ
前回に引き続き『血液浄化の工学的基礎知識』の分野を解説していきます。
今回はダイアライザの基本的な事を説明します。
繰り返しになりますが、この記事の対象者は『新人から一人前にステップアップしたい方』『現在透析技術認定士を目指している方』『透析についてもう少し勉強したいけど何を勉強したらいいか分からない方』です!
この分野を始めて勉強する方も苦手な方も安心してください。全部教えます。
ダイアライザの種類
ダイアライザには様々な種類があり、主に膜の材質によって分類されます。
膜の系統 | 材質 |
---|---|
セルロース系膜 | 再生セルロース(RC) |
セルローストリアセテート(CTA) | |
合成高分子系膜 | ポリアクリルニトリル(PAN) |
ポリメチルメタクリレート(PMMA) | |
エチレンビニルアルコール共重合体(EVAL) | |
ポリスルフォン(PS) | |
ポリエーテルスルホン(PES) | |
ポリエステル系ポリマーアロイ(PEPA) |
膜素材は大きく分けて植物由来のセルロース系膜と石油由来の合成高分子膜に分類されます。
セルロース系膜
セルロース系は均一な膜構造を持つ対象膜に当てはまる。膜構造が均一で、また親水性であり湿潤すると膨張するという特徴があるため機械的強度が増します。
その代わりにβ2ーMGなどの溶質透過性は合成高分子膜に劣ります。

機械的強度が増す事で膜を薄く作る事ができ、膜を薄くすることで膜の透水性が向上します。
ただ再生セルロースは生体適合性の観点で現在は使用されなくなりました。
今はCTA(セルローストリアセテート)も溶質透過が劣るという理由で使用が減っています。
その代わりにCTAを改良したATA(アシンメトリックトリアセテート)が話題になっています。

今の透析業界では溶質透過性(特にβ2-MG以上の物質)が重要視されています。
そういった背景からも次に説明する合成高分子膜がメジャーになっています。
合成高分子系膜
合成高分子膜は主に非対称構造と言われ溶質透過性を決定させる『緻密層』と膜の強度を保持する『支持層』の2層構造になってます。
通常、水や溶質を通りやすくするためには膜を薄くしたり、ポアサイズを広げる必要がありますが、セルロース系のような対象構造の膜だと膜全体を調整する必要があるため全体的な強度が落ちてしまいます。
一方非対称構造の膜だと緻密層の部分だけを調整すればよいので、溶質透過性を向上させても膜の機械的強度は保たれます。
これが合成高分子膜の方が溶質透過性が良いと言われる理由です。
※PMMAとEVALは合成高分子膜ですが対象構造です。そのため他の合成高分子膜に比べ水の透過性が悪くなっています。


膜の構造は理解するのが中々難しい分野です。
自分の病院で使っているダイアライザを調べてメーカーさんに構造や特徴を聞いてみるのも良いかもしれませんね。
ダイアライザの標準的な仕様
現在主流の中空糸ダイアライザは筒の中に沢山の中空糸が入っています。
中空糸とは穴の開いた糸の事でめちゃくちゃ細いストローのようなものです。
中空糸が沢山詰まっている筒の事をハウジングと言います。
その細いストローは半透膜で出来ており、外側を透析液、内側を血液が流れていて半透膜を介して触れ合っています。
中空糸1本あたりの内径は200μm、膜圧は10〜50μm、有効長は10〜30cmです。膜面積は0,2〜2.6㎡です。膜面積とは中空糸を全て広げた時の面積になります。


今回は少し短めの記事になりましたが切りがいいところで終わっておきます。
次回からはややこしい計算式なども出てきます。
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