【徹底解説】透析技術認定士合格までの道~ダイアライザの性能③~

総括物質移動面積係数
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『血液浄化の工学的基礎知識』 総括物質移動面積係数

前々回から『血液浄化の工学的基礎知識』の分野の中でも「ダイアライザの性能評価」について解説しています。

前回はクリアランスに影響を与える因子について説明しましたが、最後に「膜の性能もクリアランスに影響する」と書いていました。
前回の記事はこちら

その膜の性能というのが今回説明する『総括物質移動面積係数』です。

また難しい言葉が出てきましたが、今からしっかり説明するので安心してください。

総括物質移動面積係数を一言でいうと「ダイアライザが潜在的にもつクリアランス(CL)つまりダイアライザの性能です。

なぜこのように言えるのかをこれから説明していきます。

今回も計算式がたくさん出てきますが頑張って最後まで読んでみてください

二重境膜説

まず総括物質移動面積係数を理解するには二重境膜説というものを知っておく必要があります。

物質のとおりにくさ

二重境膜説とは

透析膜を介した拡散移動を考える時、その時の抵抗は膜抵抗だけでなく血液・透析液の流れの抵抗を受ける

境膜とは

壁面のごく近い部分で液体がほとんど動かない領域

境膜が薄いほど物質は通りやすく、速度が速いほど境膜は薄くなる

二重境膜説を考えた時の物質が移動する時の抵抗は以下の式で表される。

$$R_{O}=R_{B}+R_{M}+R_{D}$$

$R_{O}$=全移動抵抗(物質が移動する時に受ける抵抗を全て足したもの)

$R_{M}$=透析膜物質移動抵抗(透析膜を通過する時に受ける抵抗)

$R_{B}$=血液側境膜物質移動抵抗(血液側の境膜を通過する時に受ける抵抗)

$R_{D}$=透析液側境膜物質移動抵抗(透析液側の境膜を通過する時に受ける抵抗)

総括物質移動面積係数

この式で分かる事は物質の通りにくさですね。
水の流れとかでイメージしても分かるように抵抗が大きい方が流れにくいですよね。

でも膜性能を考える時には通りにくさよりも通りやすさの方が分かりやすいので通りやすさに変換してみましょう。

物質の通りにくさを通りやすさに変換する

通りやすさに変換するには通りにくさの逆数をとることで可能です。

通りにくいの反対は通りやすいって事ですね。

通りにくさ(抵抗)は$R$で表していましたが通りやすさは$K$で表します。

$R$の逆数が$K$になるので$R$と$K$の関係は$R=\frac{1}{K}$と表すことが出来ます。

つまり先ほどの$R_{O}=R_{B}+R_{M}+R_{D}$は
$$\frac{1}{K_{O}}=\frac{1}{K_{B}}+\frac{1}{K_{M}}+\frac{1}{K_{D}}$$
に変換できます。

$$\frac{1}{K_{O}}=\frac{1}{K_{B}}+\frac{1}{K_{M}}+\frac{1}{K_{D}}$$

$K_{O}$=総括物質移動係数(物質の取りやすさを全て足したもの)

$K_{B}$=血液側境膜物質移動係数(血液側の境膜を通る時の通りやすさ)

$K_{D}$=透析液側境膜物質移動係数(透析液側の境膜を通る時の通りやすさ)

$K_{M}$=膜透過係数(透析膜を通過する時の通りやすさ)

これで物質の通りやすさが分かりましたね。

ひとつ注意しなければいけないのが

総括物質移動係数です。

これは今回のメインテーマである総括物質移動面積係数とは違うため注意しましょう。

総括物質移動面積係数($K_{O}A$)

ここでやっと今回のメインテーマである総括物質移動面積係数($K_{O}A$)が出てきます。

総括物質移動面積係数($K_{O}A$)とは総括物質移動係数($K_{O}$)に面積($A$)をかけたものです。

総括物質移動係数は簡単に言うと膜の厚さや膜に開いている穴の大きさによる物質の通りやすさを表しています。

単純に考えて穴の大きさが大きい方が物質は通りやすいですよね。

総括物質移動面積係数は簡単に言うと穴の数です。

穴の大きさが同じ場合、穴の数が多い方がたくさんの物質が通れますね。

穴の数は透析膜の面積が大きくなる程増えていきます。そして、穴の数が増える程物質は通りやすくなります。

つまり総括物質移動係数($K_{O}$)に面積($A$)をかけると総括物質移動面積係数($K_{O}A$)になるという事です。

総括物質移動面積係数はダイアライザそのものの性能を表します。

クリアランスと総括物質移動面積係数の関係

クリアランスと総括物質移動面積係数の関係は次式で表すことができます。

$$CL=\frac{Q_{B}×K_{O}A}{Q_{B}+K_{O}A}$$

$CL$=クリアランス

$Q_{B}$=血流量

この式を見てみるとクリアランスは血流量とダイアライザの性能が関係している事が分かりますね。

超重要!!

ここでクリアランスについてとても重要な性質を説明します。

正直上記の内容が分かっていない人でもここだけは覚えてください。

前の記事でクリアランスは血流量を超えないと説明しましたが、総括物質移動面積係数と透析液流量も同じでクリアランスがこれらを超える事はありません。
クリアランスと血流量に関する記事はこちら

つまりクリアランスは$Q_{B},Q_{D},K_{O}A$のうち一番小さいものを超えないという事になります。

$K_{O}A$の値は分子が小さいほど高くなります。例で言うと尿素60Daの場合の$K_{O}A$の値は600~900ml/minです。

では尿素のクリアランスが600ml/minとか900ml/minになるかと言えばそうではありません。

一般的に血流量は200~300ml/min程度です。

仮に血流量を200ml/minだと仮定すると「クリアランスは血流量を超えない」という性質があるためクリアランスの最大値は200ml/minになります

つまりどれだけ$K_{O}A$を上げてもクリアランスは200ml/minがMAXだという事です。

この性質を見てみると小分子の除去効率を上げるためには血流量を上げるのが一番効果があるって分かりますよね!

逆に分子量が大きい物質の場合は$K_{O}A$の値は小さくなります。

例えばミオグロビン(17,000Da)のように大きい物質の$K_{O}A$は60ml/min程度です。

仮に血流量を200ml/minにしてもクリアランスは200ml/minになりません。

クリアランスは総括物質移動面積係数を超えないという性質があるためクリアランスの最大値は60ml/minです。

さっきと逆の関係になりましたね。

つまり小分子の場合とは逆に大分子の除去効率を上げるには膜面積を大きくしたり膜の種類を変えるのが効果的だという事です。

まとめ

総括物質移動面積係数はダイアライザの性能を表す指標でした。

クリアランスを考える時に重要な特徴としてクリアランスは$Q_{B},Q_{D},K_{O}A$のうち一番小さいものを超えないという特徴がありました。

さらに総括物質移動面積係数には「小分子だと値が高く」「大分子だと値が低い」という性質もあります。

この事から小分子の場合は

$$Q_{B}<Q_{D}<K_{O}A$$

という関係が成り立ち、大分子の場合は

$$K_{O}A<Q_{D}<Q_{B}$$

という関係が成り立ちます。

この特徴は溶質除去を考える時にとても重要なのでしっかり覚えておいてください。

【透析技術認定士】今日の内容は超重要です!!

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