血液浄化の工学的基礎知識 血液浄化の治療指標
こんにちは!もっちゃんです!!
今回から血液浄化の工学的基礎知識の中でも「血液浄化の治療指標」について解説していきます。
除去率?Kt/V?クリアスペース? そんな言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。
これらを総称して治療指標といいます。
要はきちんと透析が出来ているかを数字を見て判断するための指標ですね。
今日はこの治療指標の中でも「除去率」というものについて解説します。
簡単に結論だけ書くと除去率とは治療前後で溶質が何%除去できたかを表す指標です。
きちんと透析が出来ているかどうかを判断する事は患者さんにとってとても大事な事なのですが、これらの指標の事をきちんと理解できていたり、自分で計算できる人って以外に少ないんですよね・・・
これらをしっかりと勉強すれば患者さん毎の適切な透析治療というものが分かってくると思います。
除去率
除去率とは最初にも書いたように透析の前後で溶質の何%が除去されたかを表します。
除去率は以下の計算式で表されます。
$R$=除去率
$C_{B}(O)$=治療前の溶質濃度
$C_{B}(t_{e})$=治療後の溶質濃度
治療前の溶質濃度から治療後の溶質濃度を引いて、さらに治療前の溶質濃度で割っています。
これで除去された割合が分かる訳ですね。
実際に数字を入れてみた方が分かりやすいですね。
例)治療前の血清P(リン)濃度が5.0mg/dlで治療後の血清P濃度が4.0mg/dlだった場合の除去率
$R=\frac{5.0-4.0}{5.0}×100=20$
つまり除去率Rは20%という事になります。

今まで出てきた計算式に比べたらかなり簡単ですね。

除去率の問題点
ここまでで除去率を導き出す事ができるようになりました。
除去率とは除去された割合を見ているので一見すると治療指標は除去率だけわかればいいんじゃない?と感じてしまいます。

除去率が低い=透析が十分に出来ていない
じゃあ治療条件を変えよう!
と思ってしまいがちですが、それは誤りです。
除去率も有用な指標のひとつですが、除去率だけで透析が十分かどうかを判断してはいけません。
なぜなら除去率には気を付けなければいけない問題点があります。
それは血液の希釈の影響を受けるという事です。
例えば全く溶質の除去をせずに補液をし続けた場合どうなるでしょうか?
極端な例になりますが、補液をし続けて血管内ボリューム(血管内の溶媒の量)が2倍になったとしたらどうでしょうか?
血液が2倍に薄まっているという事ですよね。
つまり治療前に6mg/dlだったリンが治療後には3mg/dlになってしまいます。
全く溶質除去をしていないにも関わらず除去率は50%という結果になってしまいます。

これは極端な例ですが、このように治療中の補液や除水など水分が増減する事によって除去率の値は変わってしまうのです。

つまり除去率の数値だけを見て良い悪いを判断するのではなく、他のKt/Vなどの指標も合わせて総合的に判断する必要があるということです。
まとめ
今日は除去率についての解説をしました。
除去率とは治療の前後で何%の溶質が除去されたかを表す指標でした。
また除去率は血液の希釈の影響を受けるという特徴があり、除去率だけで透析が十分かどうかを判断してはいけない。という事も説明しました。
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