『血液浄化の工学的基礎知識』 クリアランス
今日でシリーズ5回目です。引き続き『血液浄化の工学的基礎知識』の分野を解説していきます。
今回からしばらくはダイアライザの性能について説明します。
今回はその中でも『クリアランス』についてです。
ダイアライザはたくさんの種類がありますが、なぜ患者さん毎に使い分けているか分からない方もいるのではないでしょうか?
ダイアライザを使い分けている理由は
種類毎に性能が違うからです。
今回からその性能について詳しく説明していきます。
ここをしっかり勉強すれば「なぜこの患者さんにはこのダイアライザを使うんだ」という疑問も解消できると思います。
繰り返しになりますが、この記事の対象者は『新人から一人前にステップアップしたい方』『現在透析技術認定士を目指している方』『透析についてもう少し勉強したいけど何を勉強したらいいか分からない方』です!
この分野を始めて勉強する方も苦手な方も安心してください。全部教えます。
血液浄化器(ダイアライザ)の性能評価
まずはダイアライザの性能を見るためにこれから勉強する項目を簡単に紹介します。
②クリアランス(CL)に影響を与える因子
③総括物質移動面積係数(KoA)
④濾過係数と限外濾過率
⑤ふるい係数

知らない言葉がたくさん出てきていますが安心してください。
これから説明します!
クリアランス(CL)
クリアランスとはダイアライザ内の物質移動を表す性能指標です。
簡単に言うと物質の抜けやすさです。クリアランスが高い程、溶質除去性能が高いと言えます。
クリアランスの計算式(限外濾過無視)
$CL$=クリアランス
$C_{BI}$=ダイアライザ入り口の溶質濃度(溶質が除去される前の濃度)
$C_{BO}$=ダイアライザ出口の溶質濃度(溶質が除去された後の濃度)
$Q_{BI}$=入り口の血流量
この式を分解して見てみましょう。
まず分子の$C_{BI}-C_{BO}$の部分からです。
ダイアライザ入り口の溶質濃度から出口の溶質濃度を引いていますね。
つまりこれはダイアライザを通る事で除去された溶質の濃度を表しています。

例えば入り口で100だったものが出口で20になっていたら80が除去されたという事になりますよね。
次に除去された溶質濃度を入り口の溶質濃度で割っています。
これは元々の濃度の何%が除去されたのかを表しています。

さっきの例で言うと80を元々の100で割ると0.8になりますよね。
つまり80%が除去されたという事です。
最後に入り口の血流量をかけていますね。
これはその血流量のうちのどれくらいの溶質が除去されているかを表しています。

血流量を200で除去している溶質がBUNだと仮定します。
さっきの0.8に200をかけると160という数値が出てきます。
これは200ml/minで流れているうちの160ml/minはBUNが除去されているという事になります。
逆にいうと残りの40ml/minにはBUNが残っているという事です。
つまりクリアランス(CL)が高い程除去性能が良いという事になりますね。

つまりクリアランスの最大値は血流量と同じで、決して血流量を超える事はありません。
例)QB200ml/minの時のクリアランス最大値は200ml/min
またクリアランスは血流量と同じ単位(ml/min)で表されます。
クリアランスの式(限外濾過あり)
実はクリアランスには限外濾過も関係しています。
ですが、上記の式を見てもらうと分かるようにこの式では限外濾過を無視しています。
無視していた理由は、まずはクリアランスとはどういった指標なのかを理解するには計算式を単純にした方が分かりやすいからです。
ここでは限外濾過を含めたクリアランスの式を解説します。
$Q_{F}$=限外濾過流量(1分あたりの除水量の事)
$Q_{F}$を引いたり足したりしていますが、これは限外濾過(除水)が行われる事で、ダイアライザ入り口と出口の血流量が変わってしまう為、それを補正するために計算されています。

まとめ
今回はクリアランスについて説明しました。
クリアランスとはダイアライザに入ってくる血液のうちどれだけが完全に浄化されたかを表す指標でした。
クリアランスはかなり大事な指標で、色んな所でこの言葉が出てきます。
しっかりと理解しておきましょう!
次回は「クリアランスに影響を与える因子」について解説します。
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