透析技術認定士 『安全対策』 出血
こんにちは!もっちゃんです!!
今回は透析中の出血について解説します。
人間は循環血液量の20%を急速に失うと出血性ショックになり、30%以上出血すると命が危険になります。
このように出血とはとても危険性の高いトラブルです。
透析とは体外循環を行う治療であり、出血が起こる危険性が高い治療です。また、コンソールには出血を直接検知する安全機構がないため、スタッフの注意深い観察のみで出血を予防・発見する事ができます。透析中の出血の原因をしっかりと理解し事故が起こらないように努める事が必要です。
出血が起こる部位は大きく分けて「血液回路・穿刺部からの出血」と「ダイアライザの膜破損による失血」の2つに大別されます。
血液回路・穿刺部からの出血
出血の原因
血液回路接続部のゆるみ・はずれ
血液ポンプより下流側で接続部のゆるみや外れがあると出血を起こします。
どこに大気開放があるかによって空気誤入か出血かが変わります。

液面調整ラインやプライミングラインの閉鎖忘れ
液面調整ラインやプライミングラインは透析中閉鎖されていますが、そこが開放されているとそこから出血します。
(プライミングラインにはクランパーがついていますが、何らかの不具合で作動しないという可能性もあるためクランパーとクレンメのダブルクランプが必要です)
静脈側留置針の抜け
静脈側(返血用)の針が抜けてしまうとそこから出血します。
動脈側(脱血用)と違い気泡検知器では抜けを発見する事は出来ません。
出血の対策
接続部は全て増し締めをする
増し締めとは一度締めた後に改めて締め直す事
静脈圧警報発生時では回路の離断や抜針を疑う
よく発生する警報だからと油断しないでしっかりと観察する必要があります。
留置針及び血液回路の十分な固定
- 回路にたわみを持たせる
- 3か所以上のテープ固定
- Ω固定
- 関節をまたぐ固定や衣服への固定を避ける

穿刺針挿入状態、固定状況の観察
- 穿刺針は2/3以上挿入する
- 穿刺部を覆わない
- 頻回の観察
- 漏血センサーの使用(高リスク患者)
発生後の対処
血液ポンプの停止
それ以上出血させないように血液ポンプを停止させます。
出血量、バイタルサインの確認
患者状態を把握し適切な処置を判断
ヘマトクリット、ヘモグロビン検査
必要に応じて輸血準備
ダイアライザの膜破損による失血
血液回路や穿刺部からの出血はイメージが付きやすいと思いますが、実はもう一か所ダイアライザからの出血があります。
これは透析膜が破損し血液が透析液側にそのまま流れ出てしまう事です。

原因
製造工程中の不良
出荷前に検査が行われるため不良品が出荷されることは極稀です。また、万が一不良品があってもプライミング中のリークテストで発見されるため、これが原因で出血する事はほぼありません。
配送中や使用前の落下
物品準備の段階でダイアライザを落下させてしまう事があると思います。衝撃によって膜が破損する可能性があるので、落下したダイアライザは見た目上問題なくても使用しないようにしましょう。
耐圧以上の加圧
ほとんどのダイアライザは『最大TMP500mmHg』と表記されています。これ以上の圧力が膜にかかると破損してしまいます。
例としては、セッティング不備でプライミング中に異常な圧力がかかってしまう場合や、回路やダイアライザがクロットしている状態で無理やり血液ポンプを回した時などです。
対策
異常な圧力や衝撃が加わったダイアライザは使わない
まとめ
今回は透析中の出血について解説しました。
透析中の出血とは場合によっては患者さんの命に関わる重大な事故につながる危険性があります。
しかし、本当に基本的な事さえ守っていれば出血というトラブルは起こりません!
大事なのは回路や留置針の刺入部、コンソールのモニターなどをしっかり観察する事です。
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